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田鎖幹夫/Mikio TAGUSARI
アーティストの現場より3
自分の思い通りにならない、蜜蝋画の魅力
Monthly Gallery Art Movie Vol.9

Full Ver.はこちらから https://youtu.be/DYlLXE1-dus

 東京・府中市の田鎖幹夫のアトリエを訪ねると、玄関で出された上履きを履いて、蜜蝋画の制作室に入ろうとすると、そこでまた上履きを履きかえるように進められた。少しと戸惑ったが、蜜蝋が底に付着すると滑って転倒する危険があるからということだった。子供の頃の悪戯を思いだしたが、改めで、蜜蝋画の取材に来たことを自覚した。

 蜜蝋画は紙や板の上に溶かした蜜蝋を塗って、その蝋に描くというより引っ掻いて線を付ける。そこに墨やインク、絵具などさまざまな絵具で絵を描き、最後に、その蝋をアイロンの熱で溶かして絵が完成する。この溶かすという作業も、アイロンだけでなく、ドライアーの熱を使ったり、それぞれの工夫で行うこともできる。田鎖の線を引く道具は、筆ではなく、日常生活で使うフォークだったりさまざまなものが机の上に置かれていた。柔らかい蜜蝋を何を使って削るかでその表情はことなり、工夫次第でいろいろな表現ができるのが面白いという。

 すべてを自己流で試行錯誤して培ってきた蜜蝋画の制作で重要なのが、蝋を溶かす温度だという。蜜蝋を80度で溶かすのがもっとも良いということも発見した。溶かした蝋を紙などに薄く塗るためだ。これが70度だと蝋の層が厚くなりすぎて、絵を描いた後に溶かすとグチャグチャと蝋の塊になって、絵が壊れてしまう。

 というように、田鎖に蝋密画のことを聞いていると、終わることなく話題が広がる。 「自分流で自分で考えるしかない蜜蝋画は、キリがなくて一生遊んでいけるほど楽しいですね」という。自分の思いどうりにならない表現の世界で作品を創り続けている。