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大久保澄子/Sumiko OKUBO
アーティストの現場より2
版表現をひとつの要素として、エレガントな色彩豊かな平面作品を創出する。
Monthly Gallery Art Movie Vol.8

Full Ver.はこちらから https://youtu.be/3f-Xj5MPXCw

 東京・東大和市の大久保澄子のアトリエは、明るい彩光の効いたモダンな佇まいですっきりとした空気を感じさせる。そこにはイギリスから持ち帰った重厚感のある版画のプレス機があったり、エンボスに使った銅版のパーツが無造作に並んでいたり、作家が愉みながら制作している雰囲気が伝わってくる。ちょうど訪ねた時は、個展(大久保澄子-実りへの扉- 10/14→10/26 Gallery一枚の繪<銀座>)に出品する作品を搬出したばかりの、作家にとってはもっとも疲れている時だったが、それでも笑顔で迎えてくれた。

「私の場合は版を作って絵画を創るということなんです。だから版画と断定しない。あくまでも絵画なんです。制作のプロセスは版をベースにして創り、そこにドローイングや、コラージュを入れたり、版に制約されないプラスアルファの部分を自由に組み合わせることによって創っていきます」

 大久保澄子の作品は、作家としての歩みを知ると、その成り立ちが分かる。グラフィックデザイナーからスタートし、銅版画の魅力にひかれ、イギリスに留学し、モノトーンの作品を制作して後に、抽象表現主義のヘレン・フランケンサーラーのカラーフィールド・ペインティングの手法に傾倒し、版画的ではない色彩豊かな作品になっていった。色彩による奥行きのある作品を制作した。版画の僕(しもべ)として技法の習熟に打ちこむのではなく、自らの表現したい絵画を創るために、手段として版表現を必要とした。そこには版画家にはできない拘束からの自由度があった。平面作品だけでなく、立体作品も制作している表現者・大久保澄子に技法の制約はない。