
YouTubeにて動画公開中 https://youtu.be/dJMebDmNwlY
「まったく無音の世界を経生涯をかけて取り組むテーマと早く出会えたアーティストは幸福だ。「夢を」を描く画家として知られる鶴見厚子が、初めて「夢」と向き合ったのは1983年、作家が30代前半の時だった。そのきっかけは「予知夢」を見たことから始まった。
「私は夢の中で愛らしい金髪の少年と向き合ってオレンジジュースを飲んでいた。<ねえダグラス…>と夢の中で私は少年に語りかけていると、突然、眼が醒めて、夢だったなあと自覚した。しかし、ダグラスという少年に心当たりはなく、妙な夢だなあと思った。そんなことを考えながら、当時勤めていた中学校に向かった。その朝、職員会で校長が<先生方、今日は珍しく外国から転校生を迎えます。ダグラス・ギルバートです>と紹介した。それを聞いて私は即座に総身に鳥肌が立ち、蒼ざめた自分を今も鮮明に思いだします」
この出来事以降も、予知夢を立て続けに鶴見厚子はみていく。

「ダリやマグリットなどシュールレアリスムの画家たちも夢を多く描いていますが、私は、夢をストーリーなどに回収せず、理不尽な世界を理不尽なまま描きたい、夢の手触りを描きたいと思いました」
こうして夢を描き続けているうちに、夢との関係が変化していった。
「夢を見ている自分自身に意識が移ってきました。夢とは内宇宙であり、内宇宙と外宇宙とのはざまに立っているのが自分」だと。
そんな画家が、一昨年、大病に罹患し「臨死体験」を経験した。それで、また制作に対する態度が変わった。
験しました。それ以来、カッコ付けるのはやめようと思いました。高度な技術の使い手としての画家であろうと思っていたのが、絵はそういうものではないだろうと深く思い、今は、肩の力が抜けていますね」
ある種、超現実的な世界を見せてくれる鶴見厚子の作品は、これからまた新たな展開を見せてくれるだろう。