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長岡美和子/Miwako NAGAOKA
アーティストの現場より4
身体性に培われた変化し続ける書
Monthly Gallery Art Movie Vol.10

Full Ver.はこちらから https://youtu.be/4QhDTgPEpXY

 千葉県船橋市。新京成線「滝不動」駅で降り、のどかな道を歩くこと数分で「滝不動スタジオM」が現れる。書家・長岡美和子の自宅であり、日々の鍛錬の場であり、年1回の新作展(第39回長岡美和子個展 10/20→10/26 滝不動スタジオM)の会場でもある。訪れた当日は、出品作をすべて仕上げ、裏打ちも済ませ、展示構成を思案している時期だった。

 15年前から文学作品から題材を取り始めた。毎回作品をひとつ決め、そのテキストから書作品にする字を拾っていく。

「一字書に取り組んでいると同じ字が重なったり、忌み嫌う字や無意味な字は取り上げなかったりします」。

 そうした「枠組み」から脱却する手立てとして文学作品を無意識に求めていなのかもしれないという。小林秀雄に始まり、さまざまなテキストと向き合ってきた。

 今回の新作展では谷崎潤一郎『陰翳礼讃』を取り上げた。「谷崎文学は文章が流れるように美しいです。『陰翳礼讃』はさらに何かを含みます。30年前に読んだ時とすいぶん印象が違うことに今回気づかされました」。問題は谷崎ではなく書家自身がだ。30年で書家の感受性や身体性がどう変化してきたか。テキストはその指標にすぎない。 常にその時々の在りようを線質に宿らせ、新たな書世界を生み出す。長岡美和子は現在も変化し続けている。